写真を「撮る」のではなく、「物語」を編む
撮影が終わり、お客様に100枚、200枚と写真を納品したとき。 お客様がそれを見返して、あるいは一冊のアルバムに仕立てたとき、そこに「その日の物語」が流れているでしょうか。
ただ似たような笑顔のカットが並んでいるだけでは、物語にはなりません。
プロの仕事は、一瞬を切り取ることだけでなく、切り取った断片を繋ぎ合わせて「あの日、家族で過ごした時間」を再構築することにあります。
1. 視点を変えて「リズム」を作る
撮影現場では、意識的に「4つの視点」を使い分けます。これがアルバムにリズムを生みます。
- 「引き」の視点(情景): 神社の大きな鳥居、広がる空、季節の木々。その日、どんな場所にいたのかを説明する、映画のロングショットのような1枚です。
- 「寄り」の視点(感情): お子様の弾ける笑顔、パパを見上げる瞳。第3章の3で引き出した、家族の心の距離を写し出します。
- 「小物」の視点(記憶): ぎゅっと握られた千歳飴、祈りを込めた絵馬、お賽銭を入れる小さな手。
- 「パーツ」の視点(愛おしさ): 石畳を歩く小さな足元、お母様と繋いだ手、赤ちゃんの柔らかな髪。
特にお子様の「足元」や「手元」は、数年後に見返したときに「こんなに小さかったんだね」と、ご両親の涙を誘う大切な記憶のスイッチになります。
こうしたドキュメンタリー的な写真の撮影には、映画やドラマの技法がとても参考になります。
映画を思い浮かべてください。カットが数秒毎に入れ替わっていきます。
映画やドラマは動画ですが、そのカット割りを写真で作るのです。
そう考えると、「物語」を作りやすくなります。
小物やパーツの写真は、映像の世界で言う「インサートカット」です。
映像系のテクニックも楽しみながら知っていきましょう。
2. 構図の中に「余白」を残す
すべての写真に主役がドーンと真ん中にいる必要はありません。
あえて左右どちらかに大きな「余白」を作る。
そうすることで、アルバムにした際に文字を書き込んだり、その場の空気感を漂わせたりすることができます。
ポスターで使われる写真を見てください。
写真の中に「キャッチコピーを入れる空間」があると思います。
商業撮影でイメージカットを撮る場合、この「空間」が必要なケースが多いです。
また、家族写真でもポストカード等で使う場合は、その空間が使いやすくなります。
被写体をドーンと置くこともいいのですが、こうした「空間を入れてバランスの取れた構図」も習得してください。
第3章の1で学んだ「光」と「背景の引き算」ができていれば、被写体を端に置いても、画面が寂しくなることはありません。それは「意味のある余白」になるからです。
3. 「移動中」こそ、物語の宝庫
「はい、撮りますよ」と言った時以外に、ドラマは転がっています。
移動中にパパに抱っこされて安心しきっている背中。
参道の石を珍しそうに眺める横顔。
第2章の「型」としての記念撮影が終わった後の、ご家族のホッとした表情。
私は、移動中もカメラを仕舞いません。
最後の最後、お別れのシーンでもまだレンズのキャップすらしていません。
むしろ、その「隙」にこそ、その家族の本質的な美しさが宿ることを知っているからです。
カメラをしまうのは、お客様が見えなくなってからにしましょう。
シャッターチャンスはいつあるかわかりませんから。
「納品」の先にある、お客様の笑顔を想像する
私はシャッターを切る瞬間、ファインダー越しにアルバムのページをめくっています。
「ここには神社の全景がきて、次のページにはこの手のアップがあって……」
そうした設計図を持って現場に立つことで、撮り漏らしがなくなり、納品物のクオリティは劇的に安定します。
設計図は、映画で言う絵コンテのようなもの。
ロケハン中に自分の中でざっくりとストーリーを描いておきましょう。
そして「綺麗な写真」を撮る段階を卒業し、「物語を届ける」カメラマンになってください。
それは、技術以前の「お客様への想像力」から始まります。
「綺麗な写真をありがとう」は、とてもありがたい感謝の言葉です。
それを一歩先に進めて、「感動しました」となればいいですね。
「一冊の物語」を構成する撮影実務を学びたい方へ
どの順番で、どのバリエーションを、どのくらいの割合で撮るべきか。 研修では、みなさまが撮影を予定している現地で例を出しながらお伝えします。
お客様の『信頼』に応えるために、カメラマンとしてのあなたが身につけるべき『確実な技術』の話をしましょう。
